障害者雇用に携わっていると、すぐ辞めてしまうので、障害者を雇用するのが難しい、と担当者から相談を受けます。常用労働者全体の一年間の平均離職率が14~17%程度で推移しています。一方、障害者の就職一年後の定着率は身体障害者と知的障害者が6割以上、精神障害者は5割を切る状況です。
企業にとっては、法定雇用率が上がり、多様な障害者の雇用が進み、定着と活躍が重要な課題となってきています。
働く障害者が離職をする理由として
〇職場の雰囲気・人間関係
〇賃金・労働条件に不満
〇仕事内容が合わない
〇作業・能率面で適応きなかった
〇再発した
〇体力が続かなかった
が挙げられています。
また、仕事を続けるうえで、改善が必要な点としては
〇能力に応じた評価・昇進・昇格
〇能力が発揮できる業務への配置
〇調子が悪いときに休みやすい環境
〇コミュニケーションがとりやすい手段や支援員の配置
です。
一方、企業側も、定着や活躍への取り組みを重要視していますが、雇用管理や人材活用の育成が思うように進まず、結果として、職場定着しない、活躍させられていない、のでしょう。
障害者の人材活用が高い状態とは、「障害者本人が自覚する、活躍しているという感触」と「企業からの評価」がバランスが取れている状態のことです。働くにあたって不安や不満を抱える障害者と、人材活用が進まない雇用側、この双方の「定着」と「活躍」のギャップが生まれている、と言えます。
「定着」と「活躍」の違いとは何でしょうか。
企業の立場から考えると、「定着志向」とは法定雇用率を達成するという目標のもと、雇用した障害者が安定して就業し続けることを求める方針です。一方で、「活躍志向」とは、法定雇用率の達成にとどまらず、売上やコスト削減、事業創出、CSRなどへの貢献を求め、そのための成果や目標達成、能力発揮を重視する方針です。
つまり、定着と活躍は、その方針は労務施策が異なります。
一方、障害者の立場から考えると、同じように、定着したい人と活躍したい人とでは志向が異なります。
定着志向の障害者の場合、障害特性とうまく付き合いながら働く必要があります。そのため就業に当たっての必要な配慮やマネジメントを受けながら、安定して就労することが優先されます。定着志向の障害者に対して、活躍志向を求めることは、ズレが生じてしまいます。
その反対で、事業への貢献意欲や、キャリアアップを求める障害者に対して、安定志向の労務施策を講じれば、やはりズレが生じます。
定着と活躍、その違いと必要な施策を見誤ると、雇用がうまくすすまない結果になります。
障害者雇用方針を「定着」か「活躍」か、どちらを志向しているか明確にするとよいと思われます。そのためには、企業が、障害者雇用に何を求めているかという「目的」を明確にする必要があります。
「定着」に向けて、企業と就労者と支援機関での配慮を確認し、次に「活躍」のために配慮事項の変更が必要です。
(管理人)
参考資料:パーソルチャレンジ株式会社「障害者雇用「定着」「活躍」に対する、障害者と企業のギャップと誤解とは」より