まったく文章を書けなくなっていまして、ご無沙汰をしています。それでも、管理人は小説を読み続けることはできていて、良い文章に出会っています。平野啓一郎さんや吉田修一さんの作品です。
何度かここで管理人が、日本語に敏感であることを書いています。いまは『日本語学』という季刊誌を購入しています。
さて、本題です。
障害者就労支援では、「大丈夫」という言葉は、魔法の言葉です。この言葉を誤ってしまうことがあります。
『日本語はこわくない』飯間浩明 PHP研究所 に、
「大丈夫」は新しい婉曲(えんきょく)表現(p169) と書いてあります。
2003年頃より、「大丈夫」の新しい用法が使われ出しています。
例えば「お箸をお下げしても大丈夫ですか?」。
それまでは、「よろしいですか」「かまいませんか」などと言っていたところです。
また、「(出先から電話で)私に何か連絡ありますか?」「大丈夫です」という例もあります。これは「特にありません」と言い換えられます。
「大丈夫」はもともと「力強い立派な男子」の意味でした。そこからそんな男子のように心配がない様子を指すようになりました。「台風が来ても大丈夫」「壁にぶつかっても大丈夫」などど使います。深刻な事態にはならないということです。
そこから用法が広がり、「よろしい」「問題ない」といった新しい意味が生まれました。
また、「大丈夫」には別の用法もあるそうです。お茶を飲んでいかないか、と誘われた人が、こう答えます。
「大丈夫です。もう帰るので」
この場合、一緒にお茶を飲むことを「よろしい」とOKしたわけではありません。「飲まなくてもよろしい」、つまりNGだと言っているのです。
この場合は、文脈からNGとわかりますが、曖昧な表現ですね。
「大丈夫」よりも前から使われていた婉曲表現に、「けっこう」があります。これもOKかNGかをぼかした言い方です。「けっこうですね」ならOK、「けっこうです!」と言い切ればNGという、微妙な違い。この「けっこう」はやがて、NGの場合に使うことが多くなり、きつい印象のことばになってしまいました。そこで「けっこう」に代わる新しい婉曲表現として、「大丈夫」ということばが使われるようになりました。
「大丈夫ですか」「大丈夫です」。
OKなのか、NGなのか。
相手を知っていれば答えはわかります、たぶん。
相手を知りすぎるのも怖い、知らないのも怖い。
人間関係とは、どこまで相手のエリアに入っていいかどうかもあります。
物理的には、手を拡げた範囲には入らない。
では精神的には?