吉田修一さんの小説です。書店に立ち寄った際に、購入しました。2011年の作品ですが、最近になって新装版で発売されていました。
主人公はテレビ局に勤めている男性。公園で、聴覚障害の女性と出会う。音のない世界、言葉を出すことの不自由さを思う。
仕事に没頭して、何もしなくても大丈夫と、彼女との距離ができてしまう。彼女が自分のもとから離れて、必死で探す。そばにいてほしい。
吉田修一さんの人間模様の描写はとても好きです。
この小説では、女性からの視点を直接、描かれてはいません。
主人公は、ドキュメンタリー制作をしているのですが、何のためにやっているのか、迷っているときがある。
「君を守りたいなんて、傲慢なことを思っているわけでもない」「君の苦しみを理解できるとも思えない」「でも」「何もできないかもしれないけど」「そばにいてほしい」。
障害当事者のことは、分かっているなんて、軽々しく言えない。
「何もできないかもしれないけど」「そばにいてほしい」。
これに尽きます。