障害者雇用とは、関連のない話です。
業務メールや書面で届く宛名で、「係長様」「所長様」と書いてあるのを見かけます。まだ「関係者各位様」にはお会いしたことはありません。各位=そこにいる全員 を指し示す言葉で、「みんな」「皆」の尊敬語にあたるもので、その場にいるひとりひとりに対して敬意を表現しています。
これは「二重敬語」と呼ばれています。
役職名にはすでに敬称が含まれています。役職名に『様』や『殿』などの敬称をつけてしまうと、二重敬語となってしまうので、使い方としては正しくありません。ただし、厳格なマナー違反とまでは言い切れませんので、使ってしまった=社会人失格!というほどでもありません。
『役職名』+『名前』+『様』
これが正しい使い方、です。
そもそも「敬語」とは、何でしょう?
『ちゃんと話すための敬語の本 (ちくまプリマー新書)』/橋本治
これを読めば、正しい敬語を使うことができます…ではなく、敬語の歴史と成り立ちを解説し、そこからどう話せばいいか考えてみましょう、という結論を書かない、橋本さんらしい著作です。
「させていただく」の語用論について、
『「させていただく」の語用論—人はなぜ使いたくなるのか』(ひつじ書房)/椎名美智
こういう論文を読むのが久しぶりでした。大変( ;∀;)
『「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』 (角川新書)/椎名美智
こちらでは、分かりやすく書かれているようです。
この「させていただく」を否定するような内容ではなく、どうして発生したのか、どういう用途で使われているのかなど、コーパスより分析をしています。面白い分析だったのが、Webページアドレス「co.jp」で「させていただく」の利用頻度が他より多いということでした。
また、「ら」抜き言葉(例:食べれる、見れる、来れる など)のように、「さ」入れ言葉として、「させていただく」は丁寧な言葉遣いで認知されてきている、とも言われています。
敬語を重ねることで、相手への敬意を表現している、ということになるのでしょうが、重ねないほうが、日本語を知っている、ということです。
【二重敬語】 A社の山田さんが草案をお書きになられる。
↓
「書く」の尊敬語は「お書きになる」です。ところが、「お書きになる」のあとに「〜れる」という尊敬も重ねています。これが二重敬語、つまり、過剰な敬語です。
【修正文】 A社の山田さんが草案をお書きになる。
【二重敬語】 社長がご覧になられました。
【修正文1】 社長がご覧になりました。
【修正文2】 社長が見られました。
※「見る」の尊敬語は「ご覧になる/見られる」。
【二重敬語】 品川の現場についてお聞きになられましたか。
【修正文】 品川の現場についてお聞きになりましたか。
※「聞く」の尊敬語は「お聞きになる」
【二重敬語】 下村部長のおっしゃられる通りです。
【修正文1】 下村部長のおっしゃる通りです。
※「言う」の尊敬語は「おっしゃる/言われる」です。
【二重敬語】 朝食は召し上がりになられましたか。
【修正文1】 朝食は召し上がりましたか。
【修正文2】 朝食はお食べになりましたか。
※「食べる」の尊敬語は「召し上がる・お食べになる」
【二重敬語】 のちほどオフィスにうかがわせていただきます。
【修正文】 のちほどオフィスにうかがいます。
※「行く」の謙譲語は「伺う(うかがう)」です。
【二重敬語】 お客様が、お帰りになられました。
【修正文1】 お客様が、お帰りになりました。
【修正文2】 お客様が、帰られました。
「帰る」の尊敬語は「お帰りになる/帰られる/お帰りなさる」
【二重敬語】 佐藤様がお見えになられました。
【修正文】 佐藤様がお見えになりました。
※「来る」の尊敬語は「お見えになる/お越しになる/いらっしゃる/来られる」です。
【二重敬語】 局長がお呼びになられています。
【修正文】 局長がお呼びになっています。
※「呼ぶ」の尊敬語は「お呼びになる」
【二重敬語】 企画書をた拝見させていただきました。
【修正文】 企画書を拝見しました。
※「見る」の謙譲語は「拝見する」です。「拝読」「拝聴」「拝観」なども同様です。
【二重敬語】 伝言をお承りしました。
【修正文1】 伝言を承りました。
【修正文2】 伝言をお受けしました。
※「受ける」の謙譲語は「承る」です。同じく、謙譲語には「お受けする」「いただく」などがあります。
【二重敬語】 サンプルをご用意されてください。
【修正文1】 サンプルをご用意ください。
※「ご〜ください」が尊敬語です。「ご〜ください」に尊敬語「される」を重ねると二重敬語になってしまいます。
【二重敬語】 昨日、商品Aをお求めになられました。
【修正文1】 昨日、商品Aをお求めになりました。
※「お〜なる」が尊敬語です。「お〜なる」に尊敬語「られる」を重ねると二重敬語になってしまいます。
もちろん、言葉の正しさは時代によって変化するものです。以下に挙げた二重敬語は、すでに表現が慣例化しているため、使用して問題ありません。
・拝見いたす(「拝見する」+「いたす」)
・お召し上がりになる(「召し上がる」+「お~になる」)」
・お伺いする(「伺う」+「お~する」)
採用面接に参考にしてください。
追記:これを書いていて、思い出したことがあります。
大学教授から「長め、短め」の「め」って何?「長い、短い」とどう違うの?と聞かれました。
30年前の話です。
現在は、もっと違う使い方があるようです(追いつかない…)。
決めつけない意味を含めているのか、標準より「長い」「短い」を表現する「長め」「短め」、なのでしょう。
ラーメン店で注文するときの「油少なめ、麺硬め、味濃いめ」、というところでしょうか。