障害者の労務管理


障害者を雇用するにあたり、就業規則を整備し直す必要はありません。対応が異なる人を採用するたびに手直しをすることも非効率です。就業規則は全社員を対象とした就業の原則と考え、就業規則にはない配慮が必要な場合は個別契約で対応しそれを明文化します(雇用契約書)。

個別に必要な配慮とは、体調調整など必要に応じた勤務時間内の休憩取得や通院のための欠勤などの取り扱いなどです。この場合、就業規則の条項の中に、「雇用契約書の内容を優先する」という意味の一文を追加しておくとよいでしょう。

また雇用契約書の中には、「本契約書にないものにおいては、就業規則による」という一文を入れると、個別対応以外のものは就業規則により対応することが明確になります。

そのほかに、現行の就業規則がフルタイム社員だけを想定している場合は、パート・アルバイトなど短時間労働者用の就業規則を用意することで、勤務時間に配慮の必要が障害者を雇用する際に、対応しやすくなります。育児や介護のための短時間勤務制度を導入している場合は、同様の条件下で障害のある社員への適用を検討する方法もあります。

障害者に配慮した就業規則を作ろうとした結果として、障害のある社員のステップアップや昇進の機会を狭めるようなハードルをつくってしまったり、本人の働く意欲を減退させることにつながる場合があるので注意が必要です。そのような状況を作らないためには、障害者をひとくくりとして対応するのではなく、「勤務時間・勤務日数」「契約期間」など、障害の有無にかかわらず、労働者の働き方の多様性を想定した規則にすることが重要です。

 

例えば、精神障害者を雇用した場合、定期的な通院や残業制限の配慮を求められます。本人と同意の上、障害のあることを周囲の従業員に伝えて、周囲の従業員の協力や理解を得ます。「なぜあの人は忙しいのに定期的に休むのか」「なぜあの人は残業しないのか」という声が上がってくることになりかねません。

精神障害者雇用を行っている多くの企業では、他の従業員には、就業にあたり配慮すべき事項等について説明を行い、協力や理解をしてもらうことで、受入れがスムーズにいきます。

定期的な通院や残業の制限、仕事内容の設定の仕方など配慮すべき事項を周囲が理解していないと、雇用された方が組織に居づらくなってしまいます。説明の方法は、本人の意向を確認しながら決めましょう。支援機関に相談してみるとよいかもしれません。

精神障害者を雇用するには、周囲の理解や多くの配慮が必要になります。どのような配慮を行うとよいのかは、本人と話合いの中で決めていくとよいでしょう。また、本人が困ったときに気軽に相談できる窓口を設けておくことも必要です。

また、企業側も、困ったときに内部で抱え込まずに外部の専門家と連携できるよう相談窓口を持っておくことが、精神障害者の継続雇用につながっていきますので、大切です。

 

障害に関することは、主治医、精神保健福祉センター、地域生活支援センターなどと連携するとよいでしょう。また、採用や就労に関することは、ハローワークや地域障害者職業センターなどと連携します。上手に外部機関を活用しながら、精神障害者雇用を行っていくとよいでしょう。

 

【就業にあたり配慮すべき事項の具体例】

・通院に関する配慮

精神障害者の場合、2週間~1ヵ月に1回の定期的な通院を必要とする方がほとんどです。体調が悪いときは、もっと頻繁に通院することもあります。通院は、働くうえで必要となりますので、周囲の理解を得られるようにしてください。服薬を必要としている方には、服薬時に周囲の視線を気にしていることがあります。余計な気遣いをしないようにしてください。

休暇(年次有給休暇)を時間単位や半日単位で取得できるようにしたり、別途通院休暇を付与している企業もあります。取得しなかった年次有給休暇で繰り越しできない分を特別休暇としてプールし、通院や体調不調による欠勤の際、使用できる仕組みをとっている企業もあります。

 

・勤務時間に関する配慮

精神障害者の特性の一つに、疲れやすい・集中力の低下・思考の低下などがあります。そのため、フルタイム勤務は難しい方もいます。最初の2~3ヵ月間は短時間勤務から始め、状態を見ながら徐々に勤務時間を延長していくという方法もあります。

1日の勤務時間を短縮する方法や1週間の勤務日数を減らす方法、適度な休憩時間の設定など、本人に無理のない勤務時間の設定から始めてみて、慣れてきたら徐々に勤務時間を増やしていくとよいでしょう。その際には、支援機関や主治医と相談をしましょう。(※この場合、助成金の対象にならない場合もありますので、事前にハローワークなどに確認をしてください)

 

面接や実習、就職した直後は、本人の体調が比較的安定しています。就労してから焦る気持ちが強かったり、少しずつ疲労が積み重なったりして、急激に悪化することがあります。不調のサインはどのようなときなのか、本人や支援機関、主治医と事前に確認しておくと良いと思います。就労後の定期面談を行って本人とのコミュニケーションを図っていくことも、就労定着するために活用してください。